政府は9日、東京電力と原子力損害賠償支援機構が4月に共同申請した東電の「総合特別事業計画」を認定する。東電は計画認定を経て、週内にも家庭向け電気料金の7月値上げを枝野幸男経済産業相に申請するが、焦点の値上げ幅は平均10.28%となった。
東電が料金制度改正を伴う本格値上げに踏み切るのは、石油危機後の80年以来32年ぶり。値上げ後の1キロワット時当たりの家庭向け料金は平均2.40円上がり、25.74円になる。東電は今後10年間で3兆3650億円のコスト削減に取り組むが、福島第1原発事故や原発停止で財務基盤が急激に悪化、4月の企業向けに続き家庭向けの値上げは不可避と判断した。東電の次期社長に8日内定した広瀬直己常務(59)は記者会見で「値上げしないといけない理由、合理化努力の両方をしっかり説明し理解いただかなければならない」と述べた。
東電は、値上げによる家計への影響を抑えるため、新たな料金体系を導入する。電気使用量の少ない家庭の値上げ幅を10%以下に抑え、低所得世帯に配慮。夏の昼間(午後1〜4時)を割高にする一方、夜間は安い料金にするプランを導入し、節電への協力を促す。
10.28%の値上げ幅は、経産省有識者会議の議論を踏まえ、電気料金への算入対象を絞り込み計算し直した。柏崎刈羽原発(新潟県)を13年4月から再稼働し、燃料費を圧縮することも前提とした。
参入対象の見直し結果は、企業向け料金にも適用される。現状で平均16.7%の値上げ幅は4月以降にさかのぼって16.39%に圧縮される。既に支払った分との差額は、今後の電気料金から差し引くなどして精算する。
家庭向け料金の値上げには枝野経産相の認可が必要。枝野経産相は「慎重に審査する」と述べており、値上げ幅は圧縮される可能性もある。また柏崎刈羽原発の再稼働が計画通り進まない場合、更なる値上げもあり得る。【宮島寛、小倉祥徳】
◇総合特別事業計画のポイント
・家庭向けの電気料金を7月から10.28%値上げ
・4月からの企業向け値上げ幅(16.7%)は16.39%に抑制
・家計負担を軽減する新たな料金メニューを用意
・柏崎刈羽原発を13年4月から再稼働
・21年度までの10年間で3兆3650億円超のコスト削減
・取締役の過半を社外人材とする委員会設置会社に移行
・会長、社長直属のスタッフ部門創設
・燃料・火力部門を12年度下期、小売り部門と送配電部門を13年4月めどに社内分社化
・国が原子力損害賠償支援機構を通じて1兆円の公的資本を6月の株主総会後に注入。議決権の50%超(潜在的には3分の2超)を確保し実質国有化
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120509-00000008-mai-bus_all